【ベンゲル】1対1の強さを追求するのは自滅への道【語る】

 日本と世界トップとの実力差は、4年間で広がったか? 答え難い質問だが、その差は決して小さいものではない。

 日本サッカー界が早急に取り組まなければいけない問題がある。それはフィニッシュの技術向上だ。今大会でも日本は何度も決定機を逃した。ラストパスの精度を欠き、シュートの正確性が足りなかったことが理由だ。適切なポジションにいない、正確なクロスを上げることができない、シュート前のトラップが乱れる。これはすべて技術的な問題だ。豪州戦で2点目を決めることができれば、1次リーグを突破できたかもしれないが、それができなかった。ワールドカップのレベルで得点機を逃すことは致命的だ。今回の日本代表のように、ボール奪取力が高くないチームには特に重要だ。実は韓国も同じ問題を抱えている。韓国はフランス相手に奇跡のドローを演じ、日本よりも決勝T進出に近いポジションにいたが、彼らには特別な印象は残らなかった。

 今後、日本サッカー界が目指す指針だが、追求すべき部分は絶対にテクニックだ。日本の武器は技術と機動力を生かした中盤の構成力。更にスタミナだ。技術を徹底的に高めるしかない。それ以外に強くなる道はない。アフリカ勢のような1対1の強さを追い求めることは、絶対に避けなければいけない。適性が違う。日本人の良さはそこにはない。愚かなアプローチで、自滅するだけだ。技術レベルには格段の差があるが、今大会のスペイン代表がいい目標になる。体格的にもさほど変わらない。ボールを徹底的に速く、有効に動かす。中盤での支配率を高める。そのための技術を徹底的に高めるべきだ。

 日本人選手はこれからも海外リーグに進出すべきだが、それは経験の部分で有効だ。技術面の能力は通常18歳までの反復と学習が大部分を占める。U―17、19、21の国際大会では順調に成果を上げている。これは明るい材料だ。若年層の段階で、フィニッシュの技術向上に取り組まなければいけない。

 アーセナルの監督として、私は日本人に常に強い興味を持っている。豊富なスタミナと高いスピード。短距離での機動力。そして、規律正しさを持っている。これらは欧州で成功するために重要な要素だ。すでにアーセナルにはアンリ(仏代表)らアフリカ系のアスリートが多い。彼らの武器であるパワーとスピードは、日本人の長所とミックスすると、チームはより向上すると信じている。弱点はフィジカル的なパワーだが、成熟すれば技術や経験でカバーできるものだ。

 まだ、日本でプロサッカーが誕生してから、10年を過ぎた程度。まだ黎明(れいめい)期と呼べる。日本はW杯で決勝T進出の常連国となり、強豪国と呼ばれる潜在能力は絶対に持っていると確信している。敗退で落胆してはいけない。腹切りは駄目だ。成長の歩みを止めてはいけない。

(2006年6月26日付 スポーツ報知)
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