「予告探偵 西郷家の謎」(太田忠司)
本格の王道をゆく作品ですね。
三百年続いた旧家。事故で死んだ天才芸術家姉妹。令嬢と婚約者候補。捜査官と旧知の不遜な探偵。そして殺人事件発生。
こりゃ本格以外の何物でもありません。
「読み終わったら気持ちよく壁に叩き付けてもらえる本を目指した」って作者は言ってるらしい。
叩き付ける人はいるかもしれないが、私の場合は脱帽した。ここまで鮮やかにやられたらねぇ。
読み始めて、ある箇所で手が止まった。
「あれ?変だな。これ、おかしいな?」
まさにそこがこの作品のキモになってました。
気がつきはしたけれど、そういう使い方をしてくるとは。
伏線に気付いても、作者の意図まではたどりつけないでしょうね。
この作品は、作者の手の中で楽しむのがいいのです。
壁本か、納得の一品か。それは読み手しだいです。