「栄光一途」(雫井脩介)
「代表候補の中から、ドーピングをしている選手を突き止めよ」重圧に堪えながら真実を追う篠子は、スポーツ界を蝕む病に直面する。爽快な語り口と絶妙なテンポで繰り広げられる、シリーズ第一弾。
雫井脩介のデビュー作です。柔道の試合のシーンが迫力あります。こういう描写をされるとたまりません。ヒロイン篠子はメンタルトレーニングを専門にする女子柔道のコーチ。彼女を支える剣道の達人の深紅(みく)。おとなしそうなのに意外に行動力のある絵津子。三者とも素敵なキャラクターです。協会の命を受けて彼女たちは、柔道という特殊な社会を侵食する、ドーピング問題の調査に関わってゆきます。
酷評する向きもありますが、私は力作だと思います。このデビュー作をスタートに、着実に力を増してきた作家ですね。次は「火の粉」を読まなくては。