「DIVE!」を読むと「飛び込み」競技が観たくなるゾ!!

「DIVE!」(森絵都)を読みました。全4巻ですが、文字どおり一気読みでした。

 10メートルの高さから時速60キロで水面に飛び込む。それが「飛び込み」競技。わずか1.4秒の落下中の演技を採点される。この作品は、マイナーな競技である飛び込みに打ち込む少年達の物語です。

 背景はシドニー五輪の前年の1999年。アメリカ帰りの美人コーチにその「秘めたる才能」を見いだされた平凡な中学生の知季(ともき)。伝説のダイバーと言われた祖父の血を受け継ぎ、ひとり津軽の海に飛び込んでいた高校生、飛沫(しぶき)。そして両親ともオリンピック選手だったというサラブレッドの高校生、要一。

 彼らが通う赤字経営のMDC(ミズキ・ダイビングクラブ)は閉鎖の危機にあり、閉鎖を免れる条件はただひとつ、「このクラブからオリンピック代表を出すこと」。オリンピックなんて夢のまた夢だと考えていた少年たちが、美人コーチの手により、ライバルとなり、傷つき、多くのものを犠牲にしながら成長していく。飛び込みという競技の面白さも理解できるし、少年たちの青春ストーリー、また成長物語としても読むことができます。最後に展開される奇跡的なハッピーエンドには、思わず拍手を贈ってしまいました。1〜3巻はそれぞれ主人公が持ち回りの形で話が進み、タイプの異なった三人の少年の成長物語が展開されてゆきます。

 1巻は知季が中心の話。幼なじみたちと楽しみながらMDCに通っていた知季だったが、アメリカ帰りのコーチが知季にだけ自主トレメニューを渡す。言われるままに知季はトレーニングを始める。飛び込みが楽しくなる一方で、友だちだと思ってた幼なじみからは嫉妬される。飛び込みを優先したがために、彼女からは手痛いしっぺ返しを受ける。そんな目に遭ったときの知季の心情が胸に迫ります。ひたむきに目標を追い、気づけば他のものを失っていた。悩んでしまう知季くんなのです。

2巻は津軽の海で飛び込んでいた沖津飛沫がメインの話。ある契約のもと、しぶしぶMDCにやってきた。でも飛沫にとって、プールは薬臭くて狭い、違和感だらけの場所。飛び込みに「採点」なんてのも納得できない。俺はこんなところで、いったい何をしてるんだろうと自問する。可愛い系の知季くんから、一転してワイルド系な飛沫の物語。伝説のダイバーだった祖父の血と意志を受け継いだ飛沫が、祖父の真実を知るあたりにぐっと重みがある。

 3巻は要一が主役。ライバルたちとしのぎを削りながらオリンピックを目指してたはずだったが、なぜか予定より早く、要一にオリンピック代表の内定が通知される。周囲は喜んだが、どうしてこんなに早く決まったのか。裏があることに気づいた要一は、とんでもない行動に出る。ここまで完璧ぶりを発揮していた要一だが、内定をもらって気が抜けてしまうあたりや、周囲の流れにあらがう姿はとても人間的。

 4巻はクライマックス。いよいよ、オリンピック代表選考会が始まる。切符を手にするのは、前人未踏の4回転半に挑む知季か、観客を魅了するスワンダイブの飛沫か、パーフェクトの要一か、よそのクラブのライバルたちか?
ところが当日、要一は高熱を出して最悪の体調で選考会を迎える。4巻をまるまる一冊が選考会の描写。演技一巡ごとに、誰かの視点で状況と心情がつづられ、章の終わりごとに、その時点の獲得ポイントが記される。試合を見てるようで緊張感いっぱいです。そして迎えるラスト。素晴らしいハッピーエンドには感動でした。う〜ん、いい決着のつけ方です。読み終わって拍手してしまいました。

 いやー、こんなに興奮するとは思いませんでした。アテネ五輪と同時並行で読んだので、よけいに雰囲気が高まったのかもしれません。小説の中で競技に挑む男の子たちは、すごく輝いていました。目標に挑戦する姿は美しいですね。アテネオリンピックの「飛び込み」競技、テレビで放送してくれるのかなぁ。

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by minami18th | 2004-08-21 12:55 | 砂に足跡