「孤宿の人」(宮部みゆき)

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舞台は四国・讃岐の丸海という城下町。この町に江戸幕府の重職にあった「加賀さま」こと船井加賀守利が流罪の刑を課せられてやって来る。加賀様は勝手方勘定奉行(幕府の財政担当)という重職にあったが、江戸の役宅に毒死した妻子と斬殺された三人の側近の亡骸が発見される。加賀様が自らの所業であると自白したため、それは悪霊か鬼に祟られた結果の乱心と認定され、流罪の刑を課せられて丸海藩預けとなる。

加賀様は、恐ろしい所業を行った人物ということで、江戸でも加賀様はこの世のものではない、悪霊に憑かれていると噂されるようになっていた。流刑先の丸海の人々は、彼が災難を運んで来るのではないかと恐れ、病気が流行ったり、雷の被害が出たりするたびに、それは加賀様のせいだと噂された。

そんな加賀様の幽閉先が涸滝の屋敷。そこで下働きの女中として入ったほうと出会い、二人の間に不思議な心の交流が始まる。


「ほう」が健気だし、引手(下っ引き)の「宇佐」も、和尚さんとか、登場人物が生き生きとしてる。描かれた様子が目に浮かぶ。ほうの雰囲気も、宇佐の活躍も鮮やかだ。加賀様の静かさは、深い水をたたえた池のようだ。
この登場人物たちが、やたらと辛い目に遭う。江戸から流された罪人(加賀様)が丸海藩に預けられる。前後して起こる災害を、人々は「鬼」のせいにする。ほうは無垢な心で加賀様と対峙する。「あほう」の「ほう」と呼ばれた少女に、新たな名前が与えられるシーンは最高。長編でなけりゃ、この感動は無い。でも、人が多く死ぬ小説だ。死なせないでほしい登場人物もいた。なんとかならなかったのかなぁ。
今年読んだ小説の、今のところベストワンですね。
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by minami18th | 2005-08-20 10:45 | 砂に足跡