娘たちのプロジェクトX

娘(高3)の通う学校では5月2日がスポーツ大会だった。
中高6学年のうち、高2を除く全学年が参加する。
高2は2週間の北米研修(ホームステイ)から帰国したばかりなので休み。

クラスではTシャツを作ったり、応援パフォーマンスの練習をしたりと、
熱気ある準備が進められた。生徒会の主催行事ということで、運営スタッフも
真剣な準備作業を行っていたようだ。

自宅が遠方のスタッフは、クラスメートの家に泊まらせてもらっていたという。
雨の予報がでていたにもかかわらず、グラウンドのライン引きを夜までかかって
完成させた担当者もいた。絶対やるんだという熱意の現れだった。

横浜では前日の夜半から雨が降り出し、大会の開催は危ぶまれた。
朝方に雨はあがったものの、土のグラウンドのコンディションは最悪。
そして中止の決定が学校から下った。朝6時のことであった。

          ***

生徒会の運営メンバーの集合は朝6時30分。登校して中止の決定を聞いた。
文字通り天をあおいだ。目をうるませる女子もいた。
もはやこれまでか。

そんな中、携帯の天気予報サイトで確認をするメンバーがいた。
「好天・気温上昇」の予報が彼らの背中を押した。
「絶対やろう」。彼がつぶやいた。

校長と生徒会担当の教師に、直接交渉を申し出ることにした。
生徒たちから親に電話が入った。
学校に撤回要請の電話をしてくれという、側面アシストの依頼だった。

まず生徒会担当の教師が味方に変わった。
校長は親たちから脅迫同然の電話をもらった。
そして中止の決定は撤回され、決行を彼らは勝ち取った。

          ***

しかし決行を勝ち取った彼らの前には、前夜の雨でびしょ濡れのグラウンドがあった。
この状態を何とかしなくてはならない。

「水をとろう」と誰かが言った。

校内を走り、水を吸い取る材料を探した。
古新聞、タオル、布切れ、段ボール、バケツ、スコップ。
使えそうなものを求めて、近所の商店へも足を運んだ。

作業開始はメールであっという間に伝わり、グラウンドに3年生全員が集合した。
「靴をぬいだほうが気持ちがいいよ」。いつしか裸足での作業となった。
裸足の男女が泥水にまみれるという、都会には珍しい光景がそこにあった。

野球部から拝借したトンボをかけ、再度のライン引き。
前夜のライン引きの経験と形跡がものを言い、短時間で終了。
予定の開始時間にも、ほぼ間に合わせることができた。

          ***

学年全員でのこんな経験は、望んでも行えるものではない。
一度は決定したものを撤回させ、開催を実現した。
こういうことって、将来の同窓会の語りぐさにもなるんだろうな。
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